キューピーの音楽評論(仮)

星野源のファンブログ

星野源の夫婦像

星野源の、通称‘’老人三部作‘’と呼ばれる曲をご存知だろうか?

老人と言いますか、‘’老夫婦‘’を描いた曲です。
ここから、星野源の夫婦像と価値観を探ってみます。

星野源1stアルバム『ばかのうた』
(2010.6.23発売)より
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老人三部作 その①『グー』

暖かい気持ちになるこの曲。
ピアノ、ギター、マリンバやらが優しい音を奏で、そっと歌います。

『グー』作詞/星野源

夢を見た日の寝起きの顔
ぶちゃむくれているけれど好きなの
ファンデーションより
すごいまつげより
グーグーグーグーグーグーグー
寝た後の顔がいい

西日差し込む居間の中で
しわを重ねた口がポッカリと
すごい着物より
輝くドレスより
グーグーグーグーグーグーグー
昼寝のよだれがいい

白いカーテンが揺れたよ今
この部屋にいつ来たのかわからない
すごい機械より
白いベッドより
グーグーグーグーグーグーグー
うちの布団がいい

隣の椅子で寝起きの顔
疲れているのその笑顔好きなの
エロいナースより
管だらけより
グーグーグーグーグーグーグー
お前の隣がいい

見慣れた天井見て笑う
二人の布団は少し狭いな
寝起きの顔は
たぶん見れないけど
グーグーグーグーグーグーグー
お前の懐で
グーグーグーグーグーグーグー
少し眠ろう

老人夫婦の日常を描いています。
お爺さんは、お婆さんの寝起きのむくんだ顔とか、ヨダレとか、家でしか見せない生活の素の部分が好きだという所に、愛情を感じます。

2番で、お爺さんは急に倒れて、入院してしまいます。
しかし、病院の手厚い看護よりも、家の布団でお婆さんの隣で眠りたいと思います。

最後は、家に戻ったのでしょう。
しかし、‘’寝起きの顔はたぶん見れない‘’というところで、最期の‘’少し眠ろう‘’は、お爺さんは永眠するのかと思います。
しかし、とても幸せな最期です。

私はこの曲を今聞くと、病気を悪化させても頑なに入院しなかった父のことを思い出します。
遺される者としては病院に入ってでも長生きして欲しかったけれど、家族が好きな人だったので、本人は幸せだったのかもしれません。

老人三部作 その②『茶碗』

‘’茶碗‘’で、夫婦の長い年月を歌うこの曲も、柔らかく優しい歌声で歌っています。
ハンドクラップも気持ちがいい。

『茶碗』作詞/星野源

二十年前に買ったの 同じ茶碗を
古いアルバムの写真の 端に見えてる
二人きりで住んでいたの 儚い夢と
有り余る程の時間を 持て余してる

ああ 気がついたら 夢は子供になり
ああ 茶碗の小さいの 一つ増える

剥げた色のふちを 今日も口に運ぼう
ほら 長い長い日々を 今日も繋ごう
少し割れた底に こびりついた過去まで
かき込むの よく噛んでね 同じ茶碗で

五十年前の笑顔は そのアルバムで
有り余る程の髪の毛 持て余してる

ああ 気がついたら 二人河童になり
ああ 湯船に浮かぶ島 雪のように

禿げた君の髪を そっと櫛で梳かそう
その 長い長い髪を 今日も結わこう
二人きりの居間に あの笑顔が浮かぶの
ゆっくりと よく梳いてね 曲がった櫛で

剥げた色のふちを 今日も口に運ぼう
ほら 長い長い日々を 今日も繋ごう
少し割れた底に こびりついた過去まで
飲み込んで よく噛んでね
二人で買った 同じ茶碗で

生活の基本。毎日、食べる。
その日々の積み重ねを、‘’茶碗‘’で表現しているこの曲。

20年使い続けた茶碗は、ふちが剥げている。底も少し割れている。
ずっと生活を支えてきた茶碗で、今日もご飯を食べる。過去から日々を繋いで、生きていく。

1番で歌っていた、茶碗の‘’剥げ‘’。
2番では、髪の毛の‘’禿げ‘’に変わる。
これがまた面白い。

1番では20年前に買った茶碗。
2番では50年前のアルバムの写真で始まる。
つまり、1番と2番の間に30年経ったと考えられる。

二人とも禿げて河童のようになってるのだ。例えが可愛いというか、愉快だ。禿げも悪くない。
お爺さんは、禿げたお婆さんの髪をそっと梳いてあげる。長い長い髪に、また歳月を感じる。

曲がった櫛も良いじゃないか。
物を大切にするって良いなと思う。

そういえば……
星野源のライブ‘’YELLOW VOYAGE‘’(2016年)のグッズで、‘’BANANA TOWEL‘’なる黄色いタオルがありましたが、「死ぬ間際に、このタオルが側にあったら面白い」というようなことを、星野源が言っていたのを思い出しました。
ヨボヨボになって瀕死の時に、真っ黄色でもなくなってるボロボロのこのタオルを持ってたら、滑稽だけど素敵だと思いました。
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老人三部作 その③『老夫婦』

アコースティックギターの音色で静かに始まるこの曲。

『老夫婦』作詞/星野源

おじいさんは ひとり暮らし
おばあさんは 雲の上

楽しかった
悲しかった
日々よ

おじいさんは 歩いてゆく
おばあさんの 好きな場所

なにもないし
なにもしない
ただ来てみただけさ

ボケたふりしただけさ

お婆さんが先に逝き
お爺さんは、お婆さんの好きだった場所を歩く。
ただ、それだけ。
そこに、それ以上の言葉は要らない。
「ららら……ららら……」と歌います。

‘’おじいちゃん‘’があだ名だった星野源

経験してきたかのように、老夫婦の歌を歌う星野源。昔から老成していたのか‘’おじいちゃん‘’というあだ名だったようです。

‘’チューボーですよ‘’にゲスト出演していた際にも、ネタにしていました。

鬼ごっこしてる時に‘’おじいちゃん‘’の振りで回避する星野源。(2015.10.24放送)
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そういう私は、中学生のときキャピキャピ出来ない方だったので‘’おばあちゃん‘’というあだ名でしたけども(笑)

‘’老人3部作‘’を通して、日々の生活をありのままに愛しているところが良い。
ワードセンスでは‘’ぶちゃむくれている‘’という言葉選び。
‘’禿げ‘’とか、あまり歌詞としては選ばないような言葉も、普通に使う言葉として入れるところに‘’日常‘’を歌ってるのだと感じます。

愛を歌う時、神格化したような歌詞だと嘘っぽくなる。そのキラキラした感じが良いという人もいるだろう。
だけど、格好つけてない言葉を使う方がより生々しいが、より理想主義にも感じられる。
‘’特別な日‘’よりも、‘’日常‘’の方が圧倒的に多いわけで。
その中で愛情を持ち続ける方が、絶対的に難しいのである。

‘’こんな夫婦になりたいな‘’と思わせられるのです。


『ばかのうた』には、他にも名曲がたくさんあります。
全曲を通して、演奏も歌声も優しい雰囲気で、繊細に作られています。
またご紹介していきますが、是非チェックしてみてください。

星野源『ばかのうた』をつくるpart1/4

星野源『ばかのうた』をつくるpart2/4

星野源『ばかのうた』をつくるpart3/4

星野源『ばかのうた』をつくるpart4/4